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    第245回:神田京子さん(講談師)

《4》香りが弱くなった匂い袋を胸元へ

 50歳手前の年女。ようやく自分のあり方を肯定し、すっきりと歩き始めた京子さん。

「生まれたときから仏間がある家でした。床の間には『本来無一物』という掛け軸があって、いつの季節もそれで、そこには何も置いてない。地味だなあと思っていたけれど、そのお軸の意味がわかると、そうだな、と。欲を満たすためにいろんなものが欲しくなるけど、最終的には身一つで死んでいくわけだから。心磨くためにお金使ったり、行動した方が気持ちいいじゃないかという発想は、自然と私にも入っているのかもしれません。声が低くなっていく、着物の色も落ち着いた色になっていく。自然に抗わず生きていく」

 この日も落ち着いたピンクベージュのお召し物。そして、胸元から取り出したのは、小さな匂い袋でした。

小さな匂い袋

「着物を運ぶとき、風呂敷に包むんですが、一つ必ず匂い袋を忍ばせています。着物は合成の消臭剤よりも、こういうお香の香りのものが合うんです。新しくて香りが強いときはキャリーケースに入れて、香りが弱くなってくると、胸元へ忍ばせています。白檀に少し丁子かな。少しスパイシーな香りがきりっとして私を仕事モードにしてくれます。」

 落語の師匠の方々も、着物から良い香りがするそうです。

「歌丸師匠も、圓楽師匠もいい香りがしました。前座の方が着替えを手伝われるので、気にされているのでしょうね」

 京子さんは今、この白檀に少し丁子の混じった大人の香りがとてもしっくり来ています。

「個人的な考えで、私は真打になるまで、周りに迷惑がかかるからと子どもは持てないな思っていたので、39歳で授かった時に講談を一年休んで40歳で産みました。真打になって、子どもができて。家庭があって、自分の人生の歩み方が落ち着いてきたときに、お香とかお線香がまた好きになってきました。思い返せば、自分を強く見せようと思っていたときは、着物を着ていても洋物の香水をバンバン使っていました。それは私にとっては鎧のようなものだったのかな。もちろん、洋服のときはそれが似合うんですが、着物のときは、和の香りが本当に落ち着きますね」

 山口を出るときは、8歳になる息子さんがぎゅっと抱きしめてくれるそうです。その母の落ち着いた和の香りは、きっと彼にとっても人生で一番好きな香りになるような気がします。

神田京子さん

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取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1

撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com


2025.2.21 written by 森綾
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