動画配信は、書籍の発売にも繋がっていきます。3月10日に発売された『ワガママに、我がままに。』(KADOKAWA)は、編集長からの熱いダイレクトメールがきっかけでした。
「そのDMから2年経っているんですけど。去年の春にそろそろやりましょうか、ということになって。自分で、自分の人生を振り返って、分かったことがありました。自分にめっちゃ厳しい時期があって、完璧主義だったんです。でもその完璧主義をやめればやめるほど、物事が好転し始めたんです。
それは自分をいためつけてたからやな、と。あるとき、大号泣して、自分にごめんなさいを何度も言ったんです。やりたくないことをしたり、会いたくない人に会ったり、そんなこと多かったな、と。それで、これからは心地いいところ、心地いいもの、心地いい人を選んで生きていこうと」
彼女が心地いいと思うものの一つに、香り、があります。
「香りは、調香師になろうかと普段から冗談で言っているくらい好きで。ディフューザーも香水もいっぱいも持っています。どちらかというと、複雑な香りが好き。ウードや白檀が好きです。
肌が多分ウエットなんですよ。だから良くも悪くも上気したように香ってしまう。それに甘さが強く出るから、店員さんに『これ、こんなふうに香るんですね』と驚かれたりします」
コンサートのときは、シャネルのココ ヌワールをつけるのだそう。
「自分がよく香り立つ性質なので、ホール中、ふんわりとこの香りになるみたいです。コンサートの日は絶対に聞かれるんですよ。『すごくいい匂いがしましたけど、なんの香りですか』と。そういうときって、きっとその香りと自分の相性がいいときなんだと思いますよ」
逆にリラックスモードのときは、別の香りを。休日によく選びがちなのは、アニック・グタールのアンブルソヴァージュという、いわゆる寺系香水(笑)。すごく洗練された寺院にいるような気持ちになれて、グラウンディングして精神的にもすっと落ち着くことができます。
「オンモードのときの香りは家ではつけないですね。リラックスできませんよね。香りとテンションって直結してて、面白い」
香りというものにも、自分の心に正直に。松尾さんは、本当に自分が一番自分でいられる生き方を見つけた人なのでしょう。
「心の赴くままに選択していくと、自分が生き生きして変わっていくじゃないですか。自分が変わると周りも変わる。環境も、巻き起こる事実も変わっていく。もし著書をお読み頂く際には、私はたまたまピアノだったけれど、みんながそれぞれで合うもの、夢中になれることに置き換えてもらったらいいと思います。もう一回、好きなことをやろうとか、思いきりやってみようとか、何歳になっても別に遅くないやんとか、そういうふうに明るく物事を捉えてもらえたらいいなと。この地球は行動の星。動けば動くほど変わります。」
彼女自身の夢は、海外で弾くこと。
「パリで弾きたいですね。あとは満天の星々の下、もいいな」
その感性はまだまだ空間や人との出会いで広がっていくことでしょう。自分の心に素直に生きること。その意味を、もう一度考え直してみたくなります。
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取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com