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    第264回:永山祐子さん(建築家)

《4》五感が満たされる空間づくりに、香りはとても大事

 ハイブランドの店舗設計などの作品も多い。初期に注目を集めたルイ・ヴィトン大丸京都店では光学フィルムの偏光板を使って現象としての縦格子を設計した。アンテプリマの六本木ヒルズ店では、シグネチャーのワイヤーバッグをテーマにし、そのコンセプトはブランドのその後の店舗展開に受け継がれた。
 永山さんの建築作品は、既存にない「コンセプトの時間と空間による具現化」だと言えるだろう。今この瞬間だけでなく、記憶としても未来への想像としても、体験できる空間をつくる人なのだ。
 そのひとつとして「香り」も設計に取り入れることがある。

「香りはすごく大事だと思っていて、店舗の設計を考えるとき、オリジナルで香りも入れてもらうことがあります。ホテルもそうだし、入ったときの香り、ってすごく大事だと思うんです。五感ですね。コロナ以降、バーチャルな空間が広がって、でも一方で、実空間への欲求も高まっている。
バーチャル空間は視覚と聴覚が圧倒的。でも触覚、嗅覚、味覚は実空間でないと得られません。本来の自然のなかには、香りもモイスチャーのような触感もすべてあって、五感が満たされる。そういうものが、まだまだ空間に求められていくと思います」

 以前、京都・両足院で催されたアーティストの展覧会で会場構成をしたこともあるそうだ。

「両足院は回遊式庭園に囲まれた素晴らしい寺院建築です。庭の連続を断ち切らないためにもそこに展示壁などはつくりたくなかった。建築的な操作を使わずに五感を使った空間構成をしようと考えました。そこで、私はまず展示の順路とアーティストの配置を決め、その場所ごとに香りを設定しました。中を歩いていくと庭を背景に作品が見え、香りを感じます。それぞれの展示室を歩いていき、すべての展示を見終わった先の小高い場所に茶室があり、そこに座ってお茶とお茶菓子をいただきながら縁側に座ると、今まで見てきた作品を全て庭側から見ることができます。今まで体験して来た作品を違った角度から振り返ることができるのです」

 何かを建て込むのではなく、空間をつくること。体験をつくること。

 

「体験としてそこに特別なものができれば、もはや何かをつくらなくてもいいんじゃないかという気持ちがどこかにあります。シチュエーションによってはそこを活かして、あれこれ手数を入れない。シンプルに削ぎ落としていって叶うことも大事なんじゃないかと。そういうことを建築を通して鍛えてもらってきたのかなと思います」

 過去をより良い未来につなげるように、新たな時空を設計する。永山さんの仕事はそこが他の建築家とは一線を画している。

ノモの国:OMOTE Nobutada
ノモの国:OMOTE Nobutada
  1. 3/3

「永山祐子個展 確かにありそうなもの」大阪巡回展開催
https://www.yukonagayama.co.jp/exhibition_osaka/


取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1

撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com


2025.12.8 written by 森綾
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