ふとカンヌ時代を思い出すのは、どんな香りをかいだときでしょう。
「カンヌには2年ちょっといましたが、海岸沿いの町なので、やはり汐の香りですね。地中海に近くからっとした陽気なので、日本の海沿いの町の香りとはまた少し違うのですが」
映画祭で有名なカンヌの町。夏はとっても暑いのだそう。宮尾さんはそこからほど近い、南仏の田舎町もいくつも訪れました。
「グラースという町が、香水で有名です。基本の精油を組み合わせて調香し、その人だけの香りを作ることができる店もあります」
宮尾さんが好きなのは、ホワイトムスクの香り。
「昔からホワイトムスクは好きです。その香りは、落ち着きとセクシーさとが共存しているから」
さわやかなセクシーさのある宮尾さんには確かにお似合いです。
「香りは常に愛用しています。夏は汗をかくので、汗の臭いよりは香水が匂うほうが良いでしょう?(笑)自宅の書斎では、お香もたいていますよ」
プリンシパルは、書斎でどんな本を読み、音楽を聴くのでしょうか。
勉強熱心な宮尾さんが、6年目を迎えるイベントが、青島広志さんとの「“バレエ音楽ってステキ!”夏休みスペシャルコンサート」。夏休みに親子でも楽しめる、オーケストラによるバレエ音楽とバレエのエンタテインメントです。
「子どもたちが笑ったり、真面目に息を詰めて聴いて見入ってくれているのがうれしいイベントです。僕は青島先生の助手として登場するのですが、バレエも必ず1曲踊ります。オーケストラがいて、その前でバレエダンサーも踊る。見て、聴いて楽しめるので、気軽に来て欲しい。曲の演奏の後、楽器単体の音をもう一度聴かせて楽器の紹介をしたり。青島先生は作曲家でとても博識なのですが、普通、気を使って聞けないようなまさかの疑問をぽんと口にしてしまう面白い人。僕はバレエ的な知識を補うようにしています」
前々回、宮尾さんが指揮者になったこともありましたが、今回は初の試みが。
「今回はお客様に指揮者になってもらいますよ!」
Kバレエカンパニーは本格的に専属のオーケストラをもつ日本唯一のバレエ団でもありますから、その指揮をできる人は本当に幸運です。
さて、バレエを踊る人にとってのバレエ音楽とはどういうものなのでしょう。
「ダンサー目線で言うと、音楽は情景や感情を表現する大事なものです。言葉のない世界なので、音楽によって僕たちは自分のなかに感情を湧き上がらせるのです。バレエはセリフのない劇ですからね」
プリンシパルとして、宮尾さんがバレエに向き合う姿勢は実に謙虚です。
「いつまで続けられるだろうかと、毎年思いますよ。ダンサーの命ははかない。でも怪我など身体的に難しくなることを除くと、ここで踊るのを辞める、という線引きは難しい。僕は役者や司会など、バレエ以外の仕事をやらせてもらっていますが、これからもできれば、自分で何かを表現することを続けていきたいと思いますね。120%表現者でいたい」
ダイナミックな踊りを繰り出すしっかりしたボディと、きらきらした瞳。宮尾さんの魅力はこれからも研ぎ澄まされていくことでしょう。
青島広志のバレエ音楽ってステキ! 公演情報
©Shunki Ogawa
本公演は、テレビ番組等でおなじみの青島広志のお話と指揮によるバレエ音楽に焦点を当てたコンサート形式の公演。助手を務めるのは熊川哲也率いるKバレエ カンパニー プリンシパルの宮尾俊太郎。本格的な演奏はもちろん、息の合った二人が繰り広げるトークは、バレエや音楽にまつわる疑問を分かりやすく解説してくれると好評を博し、夏の恒例公演となりました。管弦楽はシアター オーケストラ トーキョー、バレエはKバレエ カンパニーが出演。長年共演を重ねる両者の熱のこもったコラボレーションをご覧いただけます。
6回目となる今回は、なかのZERO大ホールにて開催。演目にはチャイコフスキー三大バレエ『眠れる森の美女』『白鳥の湖』『くるみ割り人形』の名曲に加え、昨年話題となったKバレエ カンパニー『クレオパトラ』もラインナップ。さらに、今年は舞台上でオーケストラを指揮できる参加型のコーナーなど、今までにないプログラムもご用意します。ステージと客席がより近づいて、一体感が増した会場で夏の大人気公演をお楽しみください。
スケジュール
日程:
2018 年8 月22 日( 水)11:30 開演/15:30 開演
2018 年8 月23 日( 木)13:00 開演
場所:なかのZERO 大ホール
料金:S 席:¥6,600- A 席:¥5,000-
※4 歳以上入場可能です。ただしお席が必要です。
【お問合せ】
チケットスペース 03-3234-9999
<月~土 10:00~12:00/13:00~18:00>
Bunkamuraチケットセンター 03-3477-9999
<10:00~17:30>
なかのZERO チケットセンター 03-3382-9990
【公演情報】
http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/18_aoshima/
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 山口宏之