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    第33回:大野えりさん

大野えりさん

《2》

大野えりさんは翌79年5月、日本コロムビアからデビューしました。

「当時はフュージョンへの移行期でした。3〜4枚目のアルバムはグッドクエスチョンという自分のバンドを結成して歌いました。5枚目の『Eri My Dear』はセシル・マクビーとビリー・ハートが参加してくれた。そして6枚目のアルバムで、ハンク・ジョーンズと共演することができました。ジミー・コブ、エディ・ゴメスと、すごく贅沢なメンバーで。これが、LPの時代から日本で初めてCDになるタイミングだったのですよ。それでも今のようにたくさんトラックがなく、デジタルなのに2トラック。要するにお客さんのいないスタジオライブ状態です。やり直しがきかないから、せーの!で演奏するみたいな(笑)」

しかし、だからこそ、その場の緊張感が伝わるジャズのセッションの醍醐味が伝わってくるのかもしれません。
 今回、えりさんがライブ・レコーディングをやりたいと思ったのも、そんな思いがどこかにあったから。

「2016年にニューヨークで、バスター・ウィリアムスとアル・フォスター、若井優也で録音した『How My Heart Sings』というアルバムは、その時点での集大成と言えるものになりました。では次はどうするのか?ぼんやりとですが、ライブレコーディングという言葉が頭の片隅に浮かびました。そんな時にある方が『今日の演奏はすごくよかった。レコーディングしたいくらいだった』と言ってくれたのです。あ、やっぱり、と(笑)。そこから新宿ピットインにもちかけて、実現することになりました」

8月13,14日の2日間にわたって行われたレコーディングのためのライブには立ち見も出るほどの満杯のお客さんが訪れました。
 えりさん自身も、客席と演奏する側の一体感を大いに感じた様子です。
「30代から60代までのミュージシャンが集まったバンドですが、一つの有機体になったようでした。歌伴というスタンスでなく、本当に一緒に音楽を創ることができました。それぞれが個性を主張しながら、しかも融合できる。そんな理想的な人間関係から生まれた音楽に、お客様も新しい何かを感じてくださったように思います。お客様の声援も大きな力になりました。いや〜スリリングでもあったけど、最高に楽しかったですよ」

その演奏は自由で奔放で、どこまでも広がっていくようなサウンドが、技術と人間力のある奏者たちによってきちんと支えられている安心感に満ちていました。

「ジャズをひと言で表現するとしたら、『自由』。ポップスの人たちはリハーサルを完璧にするけれど、ジャズの人はリハーサルが嫌い(笑)。人間は間違えるんだってことを前提にしていて、そこからどう盛り返すかを試されるようなところがある。優しくて、厳しい。それは『自由』という言葉そのものでしょう。年齢や肌の色や国籍も越えた会話のためのイディオムなのです。ジャズって素敵ですよ」

《3》

ジャズという音楽に出てくる香りは、コーヒーと煙草が多いようです。

「今はみんな健康的で、禁煙している人も多いですが。でも、昔はジャズ研の部室にせよ、ライブハウスにせよ、コーヒーと煙草の香りがセットになって漂っていましたね。譜面が煙草臭かったもの(笑)」

えりさんは、家では自分で石鹸を作ったり、ナチュラルな香りに囲まれているようです。

「イランイランとか、ウコンを入れると石鹸に赤みも出るので。きつすぎる香りは苦手で、つけるとしたら、天然のローズのような香りかな。眠るときも、安眠できるように、ディフューザーにラベンダーを入れたりしています。自宅にボーカルの生徒さんもいらっしゃるので、花粉の時期などは、部屋は薄荷の香りですね」

どの空間、どのシーンにどんな香りを合わせるのかというのも、ひょっとしたらジャズのセッションのようなものなのかもしれません。
 11月16日、目黒ブルースアレイで行われる大野えりさんの新譜発表ライブには、どんな香りが匂い立つのか、楽しみです。

大野えりさん

大野えりさん

スケジュール
11/17(土)BACKSTAGE・福岡
11/18(日)CINEMA THEQUE・佐賀
11/19(月)CIB・熊本
11/20(火)スイートバジル・晴海/別府
11/21(水)Live HEVEN・鹿児島
11/22(木)Life Time・宮崎
11/23(金)DOLPHY・高鍋
11/24(土)Roulette・久留米
11/25(日)ドルフィーズ・太宰府

  1. 2/2

【撮影した場所】

キーストンクラブ東京
本格的なジャズを美味しい料理とお酒で楽しめるライブハウス。山口県出身のオーナーは食材にこだわった料理にも力を入れていて、特に本場のカレー料理が絶品です。
ランチ営業もしています。

〒106-0032 東京都港区六本木7丁目4-12
ジャスミンビル2階
電話 03-6721-1723
http://www.keystoneclubtokyo.com/html/


取材・文 森 綾
https://moriaya.jimdo.com/
大阪府生まれ。神戸女学院大学卒業。
スポニチ大阪文化部記者、FM802編成部を経てライターに。 92年以来、音楽誌、女性誌、新聞、ウエブなど幅広く著述、著名人のべ2000人以上のインタビュー歴をもつ。
最新著書は、「大阪のおばちゃんの人生が変わるすごい格言一〇〇」

撮影 ヒダキトモコ
https://hidaki.weebly.com/


2018.10.29 written by 森綾
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