3歳頃、すでに和服を着て踊っている写真があるという瀬戸さんの家は、和の心を大事にされていました。
「日本家屋でしたしね。母がお茶や料理を教えていました。だから、季節に応じて、いつもお香の香りがしていましたよ。夏は伽羅。冬は梅ヶ香の練香。箪笥を開けると、匂い袋の香りがしました。仏壇のそばには、いつも毎日香が置いてありましたね」
そうして育った瀬戸さんは、今も生活空間の香りを大事にしています。地方公演では、エッセンシャル・オイルを3種類、ポーチに忍ばせています。
「地方公演では、ホテルに1ヶ月ほどいることになります。ですから、ラベンダー、ローズ、柑橘と3種類くらいのエッセンシャル・オイルをもっていって。お風呂に入れる入浴剤としても使っています。気持ちが高ぶっていても、香りが落ち着かせてくれるのです」
香りで、空間を感じる。それは、もともとそういう豊かな空間に育った記憶がなせるわざでしょう。
「実家に帰って、玄関を開けると、その季節の香の香りがして、今なら、椿などが活けられていて。そういうとき、安堵とともに日本人でよかった、と思えます」
瀬戸さんのような人が、受け継いでいくべき日本人の芸を受け継いでいるのは、どこか必然なのかもしれません。
新橋演舞場 二月競春名作喜劇公演
『おばあちゃんの子守唄』『華の太夫道中』
2/2(土)初日〜23(土)千穐楽
《昼の部》午前11時開演 《夜の部》午後4時開演
2月23日には、日本香堂 ご愛用者謝恩観劇会もございます。
3/7(木),8(金)午後5時開演、新橋演舞場地下東で銀座復興・吹きよせ踊り。
金田中特製御膳付き¥11,000-
■プロフィール
「平成3年劇団新派入団。平成13年幹部昇進。山田洋次監督の麦秋・東京物語・お嬢さん乾杯等で原節子のヒロイン役。明日の幸福・婦系図・女将・鹿鳴館・狐狸狐狸ばなし・遊女夕霧・風流深川唄・寒菊寒牡丹・銀座復興・深川の鈴・紙屋治平・振袖纏い等主演。」
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 ヒダキトモコ
https://hidaki.weebly.com/