「どういう空間で過ごすか」を大事にしている折原さんは、八ヶ岳の別荘と茨城にも古民家を構え、ご家族や友人たちと過ごしています。
「茨城の古民家は、最初、泊まるだけだったのですが、姉の家のすぐそばなので、月に数回だけ開く隠れ家カフェをやって遊んだりしています。姉が知り合い限定で予約をとって、ごはんを出したり。私はたまにお手伝いです」
どこにいても仲間に囲まれ、積極的に楽しんでいる折原さんですが、やはり戻って来る場所は湘南なのだそうです。彼女がSNSなどにアップする湘南の日々一刻と変わっていく自然の様子からも、それはしみじみと伝わってきます。
これから書かれるものも、そこが舞台になっていくのでしょうか。
「書きたいものは山積みになっています。ひとつは葉山の近代史がそこにあるようなノンフィクションとフィクションが合わさったような小説。大正時代から葉山の老舗料亭に勤めていたあるおばあちゃんの話です。もうひとつは、友人のおじいちゃんの戦時中からの話。日本の捕虜収容所に捕らえられたアメリカ兵を訪ねて歩いたらしくて、そういうことをたどる旅を小説にしたい。児童小説の予定もあります」
ひとつの場所には、現代だけではなく、過去も未来もある。そこに長く滞在する人だけが感じる時の流れがあります。
折原みとさんという作家は、これからもジャンルに捉われず、感じたものを海のように純粋に大胆に表現していく人なのでしょう。
幸福のパズル (講談社文庫)
Amazon.co.jpによる
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 斉藤有美