好きな香りを尋ねると、鞄からお香を取り出してくださいました。
「こはね、うちのかみさんが足利の国宝の鑁阿寺というところをボランティアで手伝っていて、有名な調香師さんのところへ行って、1年がかりでお香を作ったのです。それがすごくいい香りで。かみさんがそんなことをやっているというのも、最近知ったのですが。彼女は匂いに敏感で、部屋ごとに香りを変えています」
山田さんはお墓参りでもお線香をきちんと3本、必ず供えます。
「僕は6人きょうだいの末っ子なのですが、墓守をしています。東京の曙橋にある寺に墓がありまして。父が賑やかなところが好きだったので選びました。いろんな宗派のお寺の講演にも呼ばれるので、お墓参りについてはいろいろと教えてもらいました。お線香は3本。お供えするのは香りだけだから、あとは持ち帰るとか。どんな花でもいいとか。ちっちゃなことでも、勉強になります」
家族を大事に思い、先祖に礼を尽くす山田さんだからこそ、多方面での成功を手にすることができているのでしょう。
「これからですか。そうだな、1、2、3、山ダーッ」っていうのを流行らせたいんです。くだらなくていいでしょう」
人の気持ちを和らげるあの変わらない笑顔が、そこにありました。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 ヒダキトモコ