もどかしいカラダとの闘い。コンプレックスとの闘い。しかしバイオリンを通じた人とのあたたかい出会いによって、式町さんは変わっていきました。
「極め付けは、18歳のとき、小さい男の子が『みっくんみたいなバイオリニストになりたい』と、3度も手紙をくれたことでした。障害をもっていない純粋な人が、そんなふうに思ってくれる。歩み寄ってくれる。それまでの自分が愚かしい、情けないなあと思えました。その頃から、通信制の高校に通うことにして、体力づくりに時間をかけることができるようにもなりました」
そしてとうとう21歳のとき、メジャーデビューが決まります。
「僕の病気はこれからどうなるかわからない。年齢を経て、動けなくなるかもしれません。でも、映像も残るし」
そうあっさりと言われても、筋肉隆々で健康そうな姿を見ると、まさかと思ってしまうのですが。
「自分のカラダの作り方は自分だから成功したことかもしれませんが、どんなリハビリがいいのか、いろんな脳性麻痺に対応できることはあるのか、今も研究しています。成功を自分だけのものにしたくはない。もらったものは還元したい」。
感性豊かな式町さんは、香りにも敏感です。好きな香りは「ラベンダーとカモミール」と、すぐに返事がかえってきました。
「人間はだいたい1000種類ぐらいの香りを嗅ぎ分けられるといいますね。五感のなかでも、味覚より鋭いでしょう。僕はラベンダーの香りが大好きで、観客の女性からそんな香りが漂ってくると、ああ、今日の演奏はうまくいくなと思えます(笑)」
なぜラベンダーなのかもはっきりしていました。
「2〜3歳の頃、母親に連れられてよく銭湯に行ったのですが、お風呂が日替わりで、ラベンダーの香りだったのです。だから何か安心する、幸せな香りなのです」
安らぎの香りがラベンダーなら、ちょっとやる気を出すのは海の香り。
「興奮させる、やる気になるって、塩とか、酸っぱい香りだと思うんです。だから海の香り。良い塩をカラダに入れると、骨も硬くなるし、気分も上がるんですよ」
式町さんは、バイオリンの香りでどこの国のものかもわかるそう。
「イタリアのバイオリンの香り。ドイツのバイオリンの香り。ニスの香りの違いなのかもしれません。でもエレクトリックバイオリンは無香だなあ」
香りに様々なインスピレーションをもらっている式町さんには、とっておきの香りの空間がありました。
池袋にアロマの香りを漂わせるプラネタリムがあって、まれに休みができると行っています。気持ちいいんですよ」
式町さんの弾くバイオリンは、ときに海の香りが、ときにラベンダーの香りがするような気がします。全身全霊で踊るように奏でるその姿を、またコンサート会場で見たいと思いました。
⚫︎ニューアルバム
式町水晶 2ndアルバム「希望への道」
好評発売中
ドキュメンタリーでも取り上げられた「希望への道」をタイトルにした待望の2ndアルバムをリリース!陸前高田の奇跡の一本松を目の前に創り上げた「希望への道~The Road to Hope~」他、エレクトリック・バイオリンを駆使した「メイオウ」、式町水晶をモデルにした連載漫画『水晶の響』(講談社『BE・LOVE』)のテーマ曲等を収録。
⚫︎『希望への道』アルバムトレイラー
https://youtu.be/buz09vqAtsI
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⚫︎式町水晶 コンサート情報
式町水晶バイオリン クリスマスコンサート
2019年 12月 14日 (土)
会場 赤坂区民センター 区民ホール
開場 15:30 開演 16:00
倶楽部会員価格: 2,000円/Kissポ−ト価格: 2,300円/一般価格: 2,500円
学生価格: 1,000円※当日、学生証の提示をお願いする場合があります。
◇チケット取扱い
Kissポート Webチケットhttps://www.kissport.or.jp/
Kissポートチケットセンター 03-5413-7021(平日・月〜金 9:00〜 17:15)
◇問合せ:Kissポート財団 事業課 TEL.03(5770)6837
⚫︎式町水晶公式ホームページ
https://www.mizuki-shikimachi.com/
⚫︎式町水晶youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/式町水晶shikimachimizuki
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 ヒダキトモコ
https://hidaki.weebly.com/