巍山さんは、仕事をする前にお香をたいて、仕事場の空気を清めることがあるそうです。
「お坊さんからいただいた白檀や伽羅のお香をたくことが多いです。私は木の香りに囲まれて仕事をしていますが、木は種類によってまったく香りが違います。特に檜の香りが好きですね。香りが消えたと思っても、ひと削りして表面の汚れをとると、また香ります」
ひと削り。ひと鑿。その瞬間瞬間に、巍山さんは想いを込めているのでしょう。
巍山さんの作品には、歴史上の逸話に出てくる人物を描いたものも見受けられます。
「これからもっと人間の歴史、宗教を超えた人間の祈りを作品にしていきたい。
人間そのものの匂いが失われないように。100年後、1000年後のことを見据えて彫っていきたいです。に尊厳を閉じ込めたタイムカプセルを作っているような気持ちです」
レセプションパーティーで、刀鍛冶師の川崎晶平さんが「巍山さんの作品は、1000年後にミロのヴィーナスのように、腕がなくなって見つかっても、きっと生きているにちがいない」とおっしゃった言葉が印象的でした。
作品はまさにタイムカプセルのように、100年後、1000年後に、今を生きる私たちの想いを伝えていくことでしょう。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 ヒダキトモコ
https://hidaki.weebly.com/