転職先を模索していたミイナさん。一般人としてNHKの『ニッポンのジレンマ』という番組に出ていたところを、今のプロダクションに声をかけて頂きました。
「タレントとして26歳のスタートでした。最初はダメダメでしたね。2年間はテレビの仕事が中心でしたが、自分の伝えたい事を上手く伝えられない時期が長く続きました。そんな中、J-WAVEで、朝の別所哲也さんの生ワイド番組の代打を1週間やらせてもらいました。そのとき、言葉や音へのこだわりを落ち着いて表現できること、リスナーとの距離の近さなど、ラジオって楽しいなと思えたのです」やがて3年目に、NHKとJ-WAVEでラジオの仕事が決まったのです。その時は飛び跳ねるくらい嬉しかったのを今でも鮮明に覚えています。
今は2019年4月に始まった「ちきゅうラジオ」の企画にも積極的に参加しています。
「単におすすめの観光スポットを紹介していても、ネットの情報には勝てません。
それに、リスナーも高齢化しています。でも、だからこそ若い人たちにも聴いてもらえるような話題も提供していきたいと思うのです。今の20代前半の人たちは、ポッドキャストや、レトロなメディアへの興味もあるようですし。
タイムリーな情報を伝えたり、原宿などで突撃インタビューなどもしてみたい。作り込まない情報を、マイクからすぐリスナーに伝えていきたいのです」
生き生きと語るミイナさんの情熱が、マイクから直接たくさんのリスナーの耳に届くはずです。
忙しい毎日のなかで、ミイナさんがふと思い出すのは懐かしいトルコの香り。そこにある、美味しいものの香りのようです。
「すぐ目の前はエーゲ海なので、私がトルコで食べていた料理は地中海料理に近いものです。海辺にも茂みになっているローズマリーの香り。オリーブオイルと、海の香り。野菜をトマトで煮るときのタイムの香り。朝、街を歩くと、焼きたてのシミットと呼ばれるパンの香りがします。シミットは胡麻のかかった、浮き輪状のパンで、外は香ばしく、中はもちっとしています。チーズ、サラミ、蜂蜜などをはさんでいただきますが、カイマックというトルコ独特の乳脂肪の塊を塗ることも多いですね」
ご自宅では、お香をたくこともあったそうです。
「お香をたいて、エキゾチックな雰囲気をつくって、そこでお茶を飲んだり。
おしゃれのために使うことが多いです。うちのいとこは、蓮の花に座る大きなブッダの壁紙を貼っていて、そういうムードが大好きなようです。火を使うことも抵抗がありません。むしろ、家のなかにいつも火があって、料理があるというのは幸せなイメージです」
今は東京に住むミイナさん。これからはどんなことをしたいのでしょうか。
「2025年の大阪万博を楽しみにしています。ここで自分なりの貢献ができるのではないかと。昨年、結婚をしたので、自分の心に少し余裕ができました。居心地よい香りに包まれて過ごす日々の一方で、毎月、一人旅に出て刺激を受ける、という生活を続けてみようかと思っています」
穏やかな笑顔の向こうに、まだまだこれから自分にできることで世の中の役に立ちたいというきりっとした思いが見えるような気がしました。
多様化し、多国籍の人々が共存する時代に、ミイナさんの役割はますます大きくなっていくことでしょう。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 上平庸文