舘野さんは新型コロナウィルス感染予防の自粛期間中、夫とYoutubeに料理をアップしていました。
「夫はカメラを回せるので、私の調理の様子を撮ってくれているのですが、彼曰く『あ、いい香り』と思ったところで、私が火を止めるのですって。美味しい状態を判断するのに無意識に鼻を使っているのかもしれませんね。もちろん、混ぜているときのヘラの重さや、音、見た目もあるのですが、香りというのはすごく大事な判断材料になっているように思います」
「慢性的に鼻炎があるのですが、鼻は利くのです」と笑う舘野さん。住む場所を葉山に移してから、さらに香りには敏感になったそう。
「以前、川崎駅直結のタワーマンションの30階に住んでいたときは、なんの香りもしなかったのです。ところが、葉山の平家に住むようになったら、いろんな香りがするのです。葉っぱの香り、海風の香りと、嗅ぎ分けられるようになりました。感覚が豊かになったのでしょうか。東京へ仕事に行って最寄り駅の逗子駅に帰ってくると、海の近い逗子の香りがしますしね。1日のなかで朝の香り、夕方の香りも違います。そうそう、栃木の実家あたりでは、夕方になると、煙っぽい香りがするのです。目をつむっていても、香りでどこにいるかわかるかもしれません」
葉山の畑に出て、茄子や胡瓜の実、とうもろこしの作り方を説明してくれる舘野さんは、とても楽しげ。ふとレモングラスを刈って、お茶をいれてくださいました。
「季節の楽しみですね。ハーブも本当にいい香りがします」
ガラスのポットに、細い緑の葉っぱが生き生きと香っていました。
舘野真知子さんの公式レシピ集
https://www.youtube.com/channel/UCoGW46gay62VSKfEAmE67Mw
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 ヒダキトモコ
https://hidaki.weebly.com/