子育てをしながら、女優業も再開しつつある田中さん。睡眠不足もありそうなのに、疲れを感じさせず、肌も輝いています。
「好奇心の旺盛さは変わらないです。人も情報も、いろんなものに出会うのが好き。選択肢が多すぎて迷うこともあるけれど、いろんな考え方、センスがどんどん入ってくるから、擦り切れずにいられるのかな。本を読むのも好きで、そこからいろんなアイデアをもらうこともあります。それをまた、芝居に反映させていけたらいいですね」
リアルな人生で母親となって、また母親役の演技にも味わいが加わりそう。
「30歳を過ぎたくらいから、母親役はけっこうやらせてもらっていますが、これからさらに自然になるかもしれませんね。実際、母親になってみて、思った以上に大変だということがよくわかりました。世の中のおかあさんは、本当に偉いです!」。
子育てと仕事の気分の切り替えに「香り」を使うと言います。
「香りも、今はこれ!と、野生的な感覚で手にとることが多いです。理屈より感覚ですね。レモンのような柑橘系も好きだし、ジャスミンなどのフローラル系も好きだし、ユーカリなどのさっぱり系も好きです。今、持ち歩いているスプレーは、ラベンダー。緊張したり肩が凝っているときに、すごくリラックスできます」
フランスを旅したとき、ハーブの薬局のようなところで「頭痛がする」と言ったらラベンダーを処方してもらったことがあるのだとか。
「そのときのラベンダーの香りが素晴らしくて。関節に塗ると、和らぐような気がしました。それ以来、『疲れた』と誰かが言ったら、ミントを耳の下につけるといいよ、とか。薬のようにも使うようになりました」
朝食の後、お香をたくのも習慣のひとつ。
「火でたいてなくなるお香は、リセットされる感覚が大きいですね。アロマをたくのは包み込まれるような感じがありますが、お香はまた違う効能があるように思います。お客様のときは、花の香りをたいたりもします。香りは本当に大事ですよ」
女優にとっては、気分の切り替えも仕事の一つなのでしょう。これからも田中さんは、子育てにも仕事にもと忙しい日々が続きます。
「少しずつお仕事は再開しています。でもこれまでのように作品の準備に100%時間を使うことはできません。子どもが寝てからとか、朝早くとか。1日中、作品に向き合えていた頃と比べれば、もっと準備したいという焦りはあります。けれど、女優と子育てを両立してきた先輩はいっぱいいらっしゃる。家族の助けを借りて、新しいやり方を見つけて行こうと思います。仕事は大好き。一方で、後々、子どもといられなかったという後悔もしたくありません。あれもやってみたい、これもやってみたいという気持ちに終わりはありませんね」
正直に心情を語ってくださる田中さんの表情が、いきいきと輝いていました。まだまだこれから、彼女の研ぎ澄まされていく感覚と豊かな人生の機微が、ひとつひとつの作品に息づいていくことでしょう。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 細野晋司
1965 岐阜県生まれ。1990年からフリーに。
Bunkamura公式フォトグラファー。
蜷川幸雄の作品を撮った舞台写真集が話題に。
PASSION-蜷川幸雄舞台芸術の軌跡-
公式ページはこちら