ツィッターでの臼井さんのつぶやきは、睡眠にまつわるものがたくさん。朝のラジオ番組のレギュラーが決まったとき、多くのファンから「起きられますか」というメッセージが寄せられました。
「用事があればなんとか起きるんです(笑)。ラジオがある日は5時起きなので、前日は9時に寝ます。ただライブがある日はツアー中でもホテルに戻るのが深夜1時とか2時になります。寝る支度をしていると2時半とか。あとは音源の制作に入ってしまうと、朝の8時9時に寝て夕方起きる、というような生活になるのです。アベレージ4時起き、みたいな。でも最近は、なるべく0時までに作業を終わらせて、ラジオのある日の状態に近づけるようにはしています」
そんな臼井さんを眠らせない、でも大好きなのが、コーヒーだとか。
「午後5時以降は飲まないです。できれば3時まで!」コーヒーの香りは蠱惑的です。
「コーヒー豆をひいているときの香りが大好きなんです」なぜコーヒーが好きになったのか。そこにはこんなエピソードがありました。
「子どもの頃、うちは必ず朝コーヒー豆をひくことから始まっていたのもあります。その香りはとても好きだったのですが、僕は長いことコーヒーが飲めなかったのです。謎の苦すっぱい飲み物だった」
運命のコーヒーとの出会いは、ずいぶん大人になってから。
「10年ぐらい前に、小学校の頃に英語を習っていた先生の弟さんが店をやっていることを知って。『行ってやってよ』と言われて『コーヒー、飲めないしなあ』と思って、紅茶を飲んでお茶を濁してたんですよ。席で見ていると、そこの奥さんが生豆を一粒ずつハンドピックで選り分けていて。店主はそれを巨大な焙煎機にかけ、1杯に4分くらいかけてネルドリップしていたのです。そんなに手間暇かけたものがまずいはずがない。それで飲んでみたら、自分が思っていたコーヒーとはまったく違う飲み物だったんです! いまだにコーヒーが好き、というよりは、その店のコーヒーが好きですね」
今も自宅ではネルドリップで一杯ずつコーヒーをいれるという臼井さん。この日はスタジオにおじゃましたので、ペーパーでいれてくださいました。
「海外の印刷物の匂いも好きなんですけど、あれは香りじゃなくて匂いですよね。僕は舶来モノに憧れるんですね。音楽もそうだけど。今は海外にもなかなか出られないし、ライブもなかなか出来ないけど、ラジオ・パーソナリティとしての仕事や生活に慣れるためにはちょうど良いのかも。今はラジオ、がんばりますよ」
浅煎りのコーヒーの香る湯気の向こうに、やさしい微笑みと穏やかな声がありました。
臼井ミトンさん公式サイト
http://miton.jp
TBSラジオ「金曜ボイスログ」
https://www.tbsradio.jp/vl/
CD通販サイト
https://usuimiton.booth.pm/
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 初沢亜利(はつざわ・あり)
1973年フランス・パリ生まれ。上智大学文学部社会学科卒。第13期写真ワークショップ・コルプス修了。イイノ広尾スタジオを経て写真家として活動を始める。
東川賞新人作家賞受賞、日本写真協会新人賞受賞、さがみはら賞新人奨励賞受賞。写真集に『Baghdad2003』(碧天舎)、『隣人。38度線の北』『隣人、それから。38度線の北』(徳間書店)、『True Feelings』(三栄書房)、『沖縄のことを教えてください』(赤々舎)。
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