コロナ禍に関係なく、一般的に、欧米では香りによるセラピーも医療に取り入れられています。
「うつで一番できなくなるのが安眠です。眠れないから、脳の働きがうまくいかなくなります。特にうつというのは判断力が低下する疾患なので、何かを選ぶことができなくなります。選ぶだけでも疲れてしまうのです。診察室でも、色鉛筆を渡し、なんとなく好きな色を選んでもらうということを時々やっています」
植木先生も、この「選ぶということ」を、香りで実践しているそう。
「私自身も、何十種類もエッセンシャルオイルを置いていて、好きな香りを選ぶようにしているのです。ほっとしたいときは、ラベンダーやウッディ。シャキッとしたいときはペパーミントとか。チョイスという楽しみは人類だけがもっているものです。『これが好き』という気持ちをないがしろにしないでほしいですね。それは幸福なことなんです。その気持ちを取り戻すことが、自分を取り戻すことにつながります」
この1年「心が疲れてなんかいない」と言い切れる人はいないのではないでしょうか。
植木先生のおっしゃる「チョイスの楽しみ」を日々に取り入れて、笑顔になれる時間を少しずつ増やしていきましょう。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 初沢亜利(はつざわ・あり)
1973年フランス・パリ生まれ。上智大学文学部社会学科卒。第13期写真ワークショップ・コルプス修了。イイノ広尾スタジオを経て写真家として活動を始める。
東川賞新人作家賞受賞、日本写真協会新人賞受賞、さがみはら賞新人奨励賞受賞。写真集に『Baghdad2003』(碧天舎)、『隣人。38度線の北』『隣人、それから。38度線の北』(徳間書店)、『True Feelings』(三栄書房)、『沖縄のことを教えてください』(赤々舎)。
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