鎌倉・鬼頭天薫堂の3階には立派な香間があります。
「第3木曜日の午後に、香道の体験講座を行っています。香道は、室町時代に成立したと言われる日本独自の芸道です。「香」を聞き、鑑賞する「聞香」と、香りを当てる「組香」があります。武家の文化の流れを汲んだ流派もあるようですが、日本香堂が提唱しているのは、どちらかといえばゲームに近い楽しみの文化です」
体験講座は1回3000円で初心者向け。鎌倉観光のひとつとして楽しむのも良さそうです。
「『六種薫物』は、平安時代以来の代表的な薫物です。」
平安時代には香道というよりも「薫物」として、楽しんだという香。個々に調合し、部屋に漂わせたり衣類などにしみこませたその香り立ちも、その人の品格の一部として認識されていました。
「香道では香木を3ミリほどに小さく刻んで使います。」
炭を入れた灰の上に雲母でできた銀葉を置き、その上に香木を載せます。混じり気のない純粋な香の香りは、意識の奥深くにまで染み込んでいくかのようです。
小林さんは、この鎌倉の地で、古都を楽しむのと同じように香が愛されてほしいと願っています。
「お手頃なものから高価なものまであります。安かろう悪かろうということはありませんが、できれば、若い方たちにもなるべく本物に近いものを知ってもらいたいですね。いいものを知ると、心が豊かになりますから。これから春から夏にかけて、鎌倉は花の季節。桜もきれいですが、紫陽花も美しい。ぜひ、こちらにも立ち寄っていただければと思います」
一歩奥まったお店の入り口では、季節ごとの花の香りのお香がたきしめられています。この日は「あやめ」がやさしく漂っていました。また次の花の香りを聞きに伺いたくなります。
●鬼頭天薫堂
鎌倉市雪ノ下1-7-5
℡0467-22-1081
http://www.tenkundo.co.jp/index.html
取材・文 森 綾
https://moriaya.jimdo.com/
大阪府生まれ。神戸女学院大学卒業。
スポニチ大阪文化部記者、FM802編成部を経てライターに。92年以来、音楽誌、女性誌、新聞、ウエブなど幅広く著述、著名人のべ2000人以上のインタビュー歴をもつ。
著書などはこちら。
撮影 ヒダキトモコ
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