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    第3回:小泉祐貴子さん・小仲正克社長

次にどういう価値観が出てきて、どういう香りが必要かということを、2年、3年先まで考えています(小泉)

小仲 香水は処方としてはシンプルで、香料とエタノールを混ぜている。その処方についてはこれからどんなものが出てきそうですか。

小泉 アルコールを使わない香水というジャンルも出てきてはいますが、それが大きくなるかというとどうでしょうね。。。香りも複雑にはなってきていますが、エタノールの香水と比べると、ちょっと重たいんです。フレグランスとして使うことを優先するのか、肌への負担をかけないということを優先するのか、そういう使い分けが出てくるかもしれませんが。今のところ、香りを楽しむ方を重視する人が多いのではないかな。

小仲 エタノールの引火点は13度と低いですからね。揮発性が良いので。香り立ちはやはり良いですよね。

小泉 ロールオンにするとか、少し用途を変えるといいかもしれませんね。

小仲 天然香料にこだわる人も一定数いるようですね。

小泉 天然香料はいろんな香りの分子が集まっていますが、合成香料は特定の香りを持つ分子だけを取り出したり、合成して作った香りです。全く新しい分子を作ることもあります。
 現代のパフューマーは天然香料も合成香料も使いながら香りを創り出しているのですが、天然香料と合成香料の違いは、画家がパレットに単色の絵の具を乗せているのか、天然岩絵具を使っているのかのような違いですね。合成香料を使った方が、狙った香りをピュアな香りに表現することができます。シャネルの5番を例にすると、あの香りにはアルデヒドと天然のフローラルをたくさん使っているんです。それによって、花の香りが軽やかに拡散していくという、それまでになかった香り立ちを生み出すことができた。そう考えると、合成香料は今の時代に欠かすことはできないものなんです。
 香りに限らずですが、天然素材が良いという人はパリやニューヨークには多いですから、フレグランスについては今後どうなるのかなというところですね。天然香料が好きです、という方に、合成香料も合わせて使って作られた香りを嗅いでもらうと「あ、やっぱり合成香料が入っていてもいいです」という方がほとんどです。
 合成香料をどう説明するかも大事だろうと思います。

小仲 天然香料だけではパレットの色数が少なくなってしまいますよね。バリエーションという意味では合成香料を入れることで格段に広がりますよね。

小泉 天然香料の魅力ももちろんありますし、それはひとつの価値だけれど、プラスアルファで何か言えると、大きな価値になるかもしれません。

小仲 効能ではなく、エシカルという意味のストーリー感ですかね。
 さっき、18種類の香りの色数とおっしゃっていましたが、昔からそんなにありましたか。

小泉 香りを表す言葉はたくさんあったんですが、一般に耳にするのはシトラス、フゼア、フローラルなどのファミリーと呼ばれるいくつかの種類だったと思います。サンキエムソンスでは、それらを18種類のファセット(香調)にまとめて体系的に学べるようになっています。

小仲 珍しいところではどういうものがあるのですか。

小泉 例えばマリン。海や湖などの水のニュアンスを表現するファセットです。マリンという言葉自体は耳にすることもあると思いますが、どういう香りのことを意味しているのかを知らない方も多い。マリンファセットを特徴づけるカロン(キャロン)という物質があるのですが、これは生牡蠣の中に発見されている成分で、生牡蠣を食べた時に感じる磯の香りを思わせます。

小仲 ミネラルな感じですかね。

小泉 潮風という表現もされますね。他にはニューフレッシュネスというファセットもあります。洗剤の香りに使われていたジヒドロミルセノールという合成香料があるんですが、それが香水にも使われるようになり、大成功してファセットになった。フゼアやシプレーのように、ある決まった香料の組み合わせが生み出す香りを意味するファセットもあります。例えばシプレーは、シプレーという名前の大ヒットした香水で使われた特徴的な香りの組み合わせから命名されたファセットです。先ずその香水の香りを知っていないといけませんね。
 「これから」ということに戻ると、次にどういう価値観が出てきて、どういう香りが求められるかということを、2~3年くらい先まで考えています。ファッション業界で「これから」を生み出す仕事とも近い部分がありますね。もう一つは、どんな新製品が登場するかをよく見ること。そうすると、フレグランスのトレンドがある方向を向いてきているなというのが浮かび上がってくると思います。

小仲 当社も調香師の方が2名おりますが、調香とともにエバリュエーターが大事だと思うんですよね。誰がその香りを決めるのか。今と将来の市場、マーケティングも理解しておかないといけないでしょうし。それはこれからのこととして、エバリュエーターも重要になってきますね。
 今日は素晴らしいお話をありがとうございました。

小泉祐貴子さん・小仲正克社長

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小泉祐貴子さんプロフィール
https://scentscape.jp/about

サンキエムソンスジャポンのベーシック講座A開講。
https://www.cinquiemesens.jp/?pid=177923438

株式会社日本香堂ホールディングス
https://www.nipponkodo.co.jp/company/


構成・森綾(フレグラボ編集長)
撮影・萩庭桂太


2024.1.12 written by 森綾
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小泉祐貴子さん×小仲正克社長
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