33歳のとき、彼女は再び、今度はドキュメンタリー映画を撮るために塩キャラバンに同行しました。
「記録したかった。人生で初めてこれが仕事になるかもしれない、と。でも企画書をもって日本やフランスのテレビ局に行ったけれど、全然通らなかった。でも、後から思えば、自分のプロダクションで行ってよかったんです。メディアのチームだと車になるし、それはキャラバンの邪魔になる。完全なやらせでなくても、やらせ的なことも出てくるでしょう。編集が大変でした。いろいろ、映画館で上映できるような作品にするのに10年かかりました」
その後、彼女は2011年の東北大震災では現地に赴き、ジャーナリストという肩書きをもつようになりました。
「40歳でやっと仕事ができるようになったということですよね。これがやりたい、私にはこれしかできないという。でもね、そういう人、いっぱいいるんじゃないかな。やりたいことがわからない、という人たち。私はその人たちのことを考えながら、この本を書いたんです」
やりたい事がわからない人へ、彼女はこんなアドバイスを。
「やりたいことは、思いがけないところにあるかもしれない。だから、ここがダメだと思ったら、場所を変える。旅も大事ですよ。海外でもいいじゃないですか。私は縁を信じたんです。自分の直感を信じた。なぜなら、それまで他の人が『こうしなさい』ということができなかったから。自分の直感を信じる。すべては運命のタイミングですから」
最後に、彼女にトゥアレグのお香を見せてもらいました。
「燃やすと違う香りがします。砂漠は乾燥しているから、このお香に火をつけて、その煙を跨ぐようにして女性たちは体に香りを染み込ませます。何と何を調香するのか、それはその人だけの秘密。香が、その人のアイデンティティーを表しているんですね」
砂のような粉末のなかに、クミンの実のようなものも見受けられます。
今、東京の地でその香りをかぐ彼女も、彼女のなかの一面。しかし、やはり心は今もサハラ砂漠から離れた事がありません。
「今のサハラ砂漠は、軍事エスコートがないと入れません。お金がかかるから、報道カメラマンと一緒に取材で入るしかない。テロ、ウラン汚染。いろんな問題があって、もうこの本にあるようにラクダに乗ってのんびりするとかできないんです」
『トゥアレグ 自由への帰路』は、来年5月にはフランス語バージョンが発刊されるそうです。本物の自由を求める彼女の想いが、これから世界の人々の心に届いていくことを祈らずにいられません。
■デコート豊崎アリサ
著書はこちらから
トゥアレグ 自由への帰路-デコート豊崎アリサ
<上映スケジュール>
7/16(日)
19:00〜20:00 ¥3,000 @シアターギルド 代官山
7/18(火)
19:00〜20:00 ¥3,000 @シアターギルド 代官山
■スケジュール
19:00 開場・ドリンクタイム
19:30-20:30 上映『Caravan to the future』(60分)+「トゥアレグの結婚式」(8分)特別上映
20:40-21:10 デコート豊崎アリサ監督のトークショー
21:10-21:30 サイン会
21:30- バータイム
本チケットはウェルカムドリンクサービス付となっております。
ワイン、ビールや人気の特製ハイボールなどのアルコール類から、ソフトドリンク類もご用意しております。
ご来館された際に、お好きなものをお選びください。
【ご注意事項】
*飲食持ち込みは禁止させて頂いております。予めご了承ください。
*上映中もドリンクオーダー可能。是非ご利用ください。
Theater Guild 東京都渋谷区猿楽町11-6 サンローゼ代官山 103区画
https://theaterguild.co/movie/detail/Caravantothefuture/
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com