与えられた時代を思う存分にどう生きるか。昇太さんはそこに挑んでいるようでもあります。
「寿命はありますからね。今の日本は本当に豊かな国で、楽しいことがいっぱいある。ちょっと前なら戦争していたのだし、日本史上を考えても、もっとも楽しい時代でしょう。せっかくこの時代に生かせてもらっているのだから、いろいろ経験して、楽しく生きないと損じゃないですか」
車に乗る。トロンボーンを演奏する。釣りをする。料理を楽しむ。…昇太さんのプライベートは楽しいあれこれに彩られています。
「人にやってみない?とか見に行かない?と言われたら、断らないことにしています。それはつまらないだろうとか、先入観はもたないことにしているのです。若い人がやっていることも『なにそれ』『ばかばかしい』とは絶対に思わない」
最近一番面白かったのは、ボクシング。
「ボクシングジムに誘われて、さすがに大丈夫かなーとは思ったのですが、すっごーく汗かいてね。人間ってこんなに汗をかくんだーっていうくらい。それでビールを飲んだら激しく美味しくて(笑)。誘われてやってみたけどよかったな、と。ただ、誘われてやってみたけどつまらなかった、ということもありますよ。たとえばゴルフとか。全然面白くない。半日かかるでしょう。長すぎるんですよ、僕には。せっかちなんです、僕は。それに、朝早く起きたくないから落語家になったのに。まあ、上手になれば楽しいんでしょうけどね(笑)」
やることがありすぎての「独身」!?
「独身、っていうのは僕にとっては半分以上職業だと思っていますので(笑)。嘘ついているわけでもないしね。学習しすぎたのかな。でもある種、結婚って賭けみたいなところがあるでしょう。すごく優しそうだと思ったのに、結婚したら全然違うとかっていう話はよく聞くし。それは男性も女性もお互いにそうでしょう?」
どうもモテないわけではなさそう。
「この仕事をしていて、モテなかったらおかしいですよ。え、まさか、っていう若手でも結婚してますからねえ(笑)。ただ、このままだと、自分が建てた家を甥っ子が相続することになっちゃうので、悔しいから、使い切っておかないとと思っています(笑)」。
昇太さんの一軒家には、たくさんのお友達が集っています。
「そういうときに、お香をたきますね。お香はね、旅先でたいてあったりして、ああ、いい匂いだなあって思うのを買ってきたりね。特定の香りが好き、っていうことはないのだけれど、そのときの旅の思い出みたいなものの香りがするんじゃないですか」
思い出を香る。友達との時間を香る。昇太さんの繊細な一面が垣間見える気がします。「笑点」での闊達な仕切りの向こうに見え隠れする、先輩たちへの気配りと優しさに共通するような。
「『笑点』の司会は別に緊張しないですよ。昔からの、仲間であり、先輩ですから。僕はそこで育ててもらったわけだし。うん、本当に楽しいですよ」
賑わい、明るさ、はからい。昇太さんに感じる人としてのそんな魅力は、華やかな香りのように伝わってくるのです。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 上平庸文
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