真剣に歌を志した里さんは、18歳で上京しました。
「ポップスの歌手になりたいと思って、プロデューサーを紹介してもらい、2005年にデビューしました」
その後、ミュージカル女優としても活躍。2013年、2015年には『レ・ミゼラブル』でフォンテーヌの役にも抜擢されました。
そして、今回『西郷どん』のテーマ曲を歌うことに。
「たくさんの人に知っていただく、すごいチャンスをいただいたと思っています。すでに私の声が流れていますが、自分ではいまだに『私、歌っているんだ…』って感じです(笑)。経験もチャンスもいただけて、本当にありがたいと思っています」
劇中では、奄美大島に流された西郷隆盛の2度目の妻となる愛加那の義理の姉役を演じる。歌の上手な娘という設定だ。
「私だけが本当に奄美大島の出身なので、言葉もすんなり出てきます。歌もうたわせてもらったりします」
実際に島の民謡の継承者としての里さんが歌う島唄は、きっとドラマに奥行きと熱を加えることでしょう。
「私にとって島唄は変わらない原点。普段生活するのと同じように、あるものです。祖父に教えてもらって、止めなくてよかったと思います。すべてが、今につながっていますから」。
里さんの原点である奄美大島とその島の唄。そこにはどんな香りが漂っているのでしょうか。
「私は夏に帰ることが多いのですが、奄美の空港に着いて、飛行機を降りると、湿った風と海の香りがします。実家も海に近いところにありますので、海の香りが島の香りですね。その香りをかいだ瞬間、その空気のなかに自分が溶け込んで、自然に戻れるような気がするのです。飛行機のなかから景色は見えていても、やはり空気や香りを感じるのは違います。風、空気、香りが毛穴にまで入ってきて、それが心地よく帰ってきたことを感じさせてくれるのです」
ハイビスカスなどの花の香りもあるけれど、海と草の香りが強くて、かき消してしまうと言います。でも里さんは花の香りも大好き。
「甘い香りが好きで、よくばらの香りを使います。ESTEBANのセラミックにエッセンシャルオイルをたらして使うものを愛用しています。海外で仕事をすることも多くて、2016年にはスウェーデンのヨーテボリに3ヶ月いたりしたのですが、そういうとき、自分の家と同じ香りにしておくことで、ずいぶん、リラックスできました。ベッドの脇やリビングにESTEBANのセラミックを置いていたのです」
様々な土地での暮らしと経験を重ねても、なおかつ島の風をまとって。
里アンナさんの歌声と奄美大島での演技は、きっと多くの人の心に爽やかに吹き、余韻を残していくことでしょう。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 ヒダキトモコ
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