お母様の命日は11月9日。
「もうがんの末期だと言われて家に帰ってきたのが9月。2ヶ月ぐらいを家で過ごして、ちょうどマンションの前の大きな金木犀にたくさん花が咲いて、あの香りが漂ってきた頃、亡くなったんです。今年はあっという間に咲いて散ってしまいましたが、金木犀の香りを嗅ぐと母を思い出します」
町さんは、お母様のおかげでたくさんのことを得たと思っています。
「車椅子の母と過ごすことで、障害も母の一部であり、その人がその人であることに変わりはないこと、どんな状態であってもありのままを受け入れることの大切さに気づくことができました。私は母のことがなければ、この人生を送っていなかった。大変でしたが、色々なテーマを私に残してくれました。家族介護の当事者として、これからも生き辛さを抱えている人の、声なき声に耳を傾け、伝え続けていきたいと思います」
最期の2ヶ月を在宅で過ごしたお母様は、きっと幸せに天に召されたことでしょう。命の尊厳を考え、生きてきた人生をともに見つめた時間は、町さんにとっても今や宝物。人に向き合うという面倒を避けてしまったら、本当の幸せはない。町さんはこれから、出会う人たちに大きな愛を注がれていくことでしょう。
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取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
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