たくさんの人に出会い、たくさんの関わり合いを過ごしてきた国生さん。今回、このフレグラボに出たいと思ってくれたきっかけは、生活のなかで「香り」を大事に思っていたからだそう。
「人と人は一期一会。人と出会ったときに、その人の香りも思い出になるでしょう。香りはその人を一番最初に表現するものだとも思うんです。例えば、私がつけている香水をどこかでかいだときに『あ、あの時の国生さんと同じ香りだ』と、思い出してもらえるかもしれない。そういうふうに、人を印象づけるものだと思います。ただ難しいのは、尊敬している人がつけている香りを自分がつけても、違う匂いになったりすることがありますよね。だから、香りって自分を知ることにもつながると思います」
香りを自己表現にする。その一方で、空間に漂わせても使う。
「生活のなかでは、香りは気分転換に使うものであり、天に祈るときのものでもあります。気分が落ち込んでいても、気分がいい時も、大事。バラもラベンダーもバニラも好きですよ」
Webマンガの原作になった国生さんの小説『国守の愛』でも、主人公が香りをまとっている。
「主人公の男の子は、特殊部隊員の警護の役なんですが、アンバーの香りをつけているという設定にしています。女の子を守るために、いつも背中を向けているんです。それで彼女は『あなたはまた私に背中を向けている。あなたの香りは憶えてしまったわ』とモノローグさせているんです」
なんとも切ない香りの表現。その彼女は香りによっても自分が守られていると感じているのだろう。
「嗅覚は人間の究極の本能だから、危険も嗅ぎ分けるし、人柄も嗅ぎ分ける。嗅覚が衰えると味がわからなくなるし、食欲も出てこないから。生命本能の一番大事なものなんだと思います」
五感を研ぎ澄ませつつ、国生さんが執筆するのは明け方の少し前からだそうだ。
「朝日が昇るちょい前ぐらい、午前3時ぐらいから作業をしているんですが、そのシーンとした時間に起きて、暗いところから日が昇っていくあの瞬間の香りが好きなんです。だから、窓を開け放って深呼吸するんですよ」
言葉を選びながら、余談を混じえながら。自分の本心を一心に伝えようとする国生さんの繊細な表情が心に残った。自己表現の場をひとつ増やして自由な場所を得た彼女が、また歌い出す日も遠くなさそうだ。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
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