「甘酸っぱい恋の話、はないのですけれど…」
香りについての話をふると、そんな前置きをしながら、Asamiさんは楽しげに話してくれました。
「もともとは柑橘系のベルガモットの香りなどが好きで。気分を変えたいときは、アールグレーの紅茶を飲んだりします。以前は柑橘系以外は好きになれなかったのですが、今は齢をとってホルモンバランスや自律神経系のバランスが変わってきたのか、体験が気持ちに関わっているのか、季節の自然な香りに心を寄せるようになりました」
散歩をしながら、季節の香りを敏感に味わう。それは、長らく続いた新型コロナウィルス感染予防の自粛生活中にもできた、幸せなことでした。
「5月の香りが好きですね。若葉が芽ぶいて、青っぽく香る。その香りがすると、1回リセットされて、誰かに会いたいなと思ったり、前向きになれたり。懐かしい気持ち、穏やかな気持ち、優しい気持ちになれたりします。それはけっして人工的に作れない香りですね」
グリーンや柑橘の精油を使ったりすることもあるそう。
「その季節の香りに近いものを探します。そしてその香りをかぐと、旅に出たくなるのです。瀬戸内が大好きで、1年に一度は行くのですが、今年はこの季節はもう無理なので、秋頃かなあ。あの穏やかな海、太陽に早く会いたいです」
今年の目標は「CFに10本出る」ことだったそうですが、今は世間の流れとともに小休止。でも焦りはありません。
「私は飛び抜けたことはできないタイプだと思います。なんでもこつこつ、こつこつ、いこうと思っています」
ものすごくポジティブなわけではなく、でも一歩一歩、着実に歩く人。緑の風のなかの散歩の速度で、Asamiさんは幸せを味わって歩む人なのでしょう。
サムネイル写真:萩庭桂太
その他:事務所提供
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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