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    第84回:朝岡さやかさん(作曲家・ピアニスト)

《3》故郷の浜松で、新しい香りを感じながら

 お子さんは長男9歳と、5歳の双子の女の子。この日も台風の余波の大雨のなか、車でスイミングスクールの送り迎えをしながら、インタビューに応じてくださいました。

「2011年にロンドンから帰国して、9年近く東京にいました。浜松に来てから、東京では味わえない海、湖、畑、山、川… それぞれの香りを吸い込んでいます。耕運機で畑を耕すと、土の香りがぷうんとたちのぼる。ピアノも自然の木からできています。日本のピアノは浜松が最初だったのですよね。だから原点に帰ってきたような気がしています」

 野菜を畑で育てる。育てていないものはよそ様の畑へ買いにいく。そんな生活が彼女の感性をまたビビッドにしている様子。

「子育ては真っ最中ですけどね。いろいろとそちらにも時間が必要で、そぎ落として、そぎ落として、作曲が残っている感じ。だからこれからも作曲は続けていきますし、もうひとつ、やりたいことがあるのです」

 それは、次世代の子どもたちの音楽教育の新しい形をつくること。

「最初から、演奏と同時に作曲を学ぶことができたら、創作を学ぶカリキュラムがあったら、もっとすごい才能が出てくると思うのです。何より、音楽のなかで自由になれる。だから、カリキュラムを作ることができたらと思います」

 時間の制約のなかでこそ、できることがあるかもしれないと、朝岡さんは前向きに考えています。

「子育ても100人の親がいたら100通りの状況。私たちの年齢以上の方々は、親の介護がある場合もあるでしょう。でも、限られた時間のなかで、集中力は強まるかもしれません。制約があるからこそ、生まれるクリエイティビティもあると信じています」

 限られた時間のなかだからこそ「何がやりたいか」が見えてくる。それは忙しい日常のなかで、誰もが手に入れられるポジティブシンキングかもしれません。
 朝岡さんのこれからの愛に満ちた作品がますます楽しみです。

朝岡さやかさん

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朝岡さやかさん 公式ホームページ http://sayakaasaoka.com/

CDジャケット
映画『ソワレ』公式ホームページ  https://soiree-movie.jp/

取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1

撮影 初沢亜利(はつざわ・あり)
1973年フランス・パリ生まれ。上智大学文学部社会学科卒。第13期写真ワークショップ・コルプス修了。イイノ広尾スタジオを経て写真家として活動を始める。
東川賞新人作家賞受賞、日本写真協会新人賞受賞、さがみはら賞新人奨励賞受賞。写真集に『Baghdad2003』(碧天舎)、『隣人。38度線の北』『隣人、それから。38度線の北』( 徳間書店)、『True Feelings』(三栄書房)、『沖縄のことを教えてください』(赤々舎)。


2020.9.30 written by 森綾
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